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「な……何ですって!!?」 「ですから姫様!姫様ももう16歳なのですから、 お見合いをせねばなりませんといっておるのです! だから明日…ぼふぁぁ!?」 ダガーはそこらへんにあるものを取っては投げ取っては投げ取っては投げた。 さすがに姫の部屋ともなると装飾品の数が多いことはあって、 投げても投げても装飾品は数多くあるのである。 「嫌よ!絶対イヤ!!!出てってーーーーーーーーー!!!!」 「しかし姫さ…」 「出てって出てって出てってーーーー!!!!!」 ダガーは悲鳴に近い声で怒鳴り散らす。普段では考えられないような大声だ。 目にはうっすらと涙を浮かべて、キッとスタイナーを睨む。 スタイナーは諦めたのか、しょんぼりと部屋を出た。 ドアが閉まると同時に、ダガーはベッドに突っ伏した。 「お見合いなんて、絶対、絶対やらないんだから…」 こぼれそうになる涙を隠すように、ダガーはベッドに顔をうずめた。 一方、城下町では… 「な、ななななんだってー!?」 「何度も言わせるなずらよ!姫さまがお見合いするらしいって聞いたんずら!!」 「…シナ!緊急会議だ!全員集めて来い!!」 「お、俺パシリずらか!?」 ジタンはシナの肩にポンッと手をのっけた。 そして、爽やか〜な笑顔でシナに向かって言った。 「何言ってるんだ、友達じゃないか(爽)」 「………わかったずら…」 にこやかに笑うジタンが怖くなったのか、シナは大人しく酒場を出てった。 ジタンはジタンで、シナが戻ってくるまで『ダガー救出作戦』を必死に考えた。 翌日、 スタイナーはダガーを連れて行くために、部屋の前でダガーを呼んでいた。 本当は部屋に入りたいところだが、中から鍵がかけられていて、入る事ができないのだ。 「ひーめーさーまー!!時間でありますよー!」 「………イヤ。」 何回言っても返事はこれだけしか返ってこない。 しかしそんなことくらいで諦めるスタイナーでもなく、 この言い争いは数分に渡り、続いていた。 「姫様!いつまでも我侭をおっしゃられてはいけませんぞ!」 「だったらスタイナーが姫になればいいじゃない!!」 「な、何をおっしゃいます!姫様!(汗」 「…すぐに断っても言いなら、行ってあげてもいいわよ?」 「姫様!!」 「もう、しつこいわよ!!」 「ですが……ぬわぁあああ!?」 「…………??」 その悲鳴の後、スタイナーの声は全くと言って良いほど聞こえなかった。 心配したものの、『もしかしたら出すための作戦じゃ…』 と、思ってしまうと心配でもドアを開けることは出来なかった。 しかし、ダガーの意志とはまったく関係なく、ドアは開いたのだ。 「ぇ…?」 鍵がかかっていたのにも関わらず、突然開いたドアに驚いたダガーは、反射的に自分の杖を持つ。 こっちにむかってきたら顔面に杖を直撃させるつもりだった。 いざとなったら召喚だってする、そのくらいお見合いなど行きたくないのだ。 「(だって……私が好きなのは…………)」 そう、思った瞬間だった。 さっきまで少しずつ開いていたドアが、いきなりバンという音を立てて開いたのだ。 一瞬、頭の中が真っ白になった。 ダガーが唖然としていると誰かが素早くダガーを担いだのだ。 そしてそのまま部屋を出て、螺旋階段を降りていく。 「きゃっ!?ちょっと!離しなさい!!!」 正気に戻ったダガーは、見合いに行きたくないがため、誰かの腕の中を じたばたと暴れた。 「うわっ!?ダガー、俺だよ俺!」 「ジタンの真似なんかしてもだめよ!オレオレ詐欺なんて許さないわ!!」 「い、いや…違……」 「本物のジタンなら私を担いだりなんてしないわよ!」 「そりゃ触ろうとしたらラムウが……」 何を言ってもダガーは聞く耳もたない。 ただ腕の中でじたばたと暴れるだけだ。 このまま騒がれて警備兵が来たらやっかいなので、ジタンはひょいっと ダガーを持つ持ち方を変えた。 「きゃぅ!?」 「………う〜ん…これなら顔が見えるだろ?」 そういうなりジタンはダガーをお姫様抱っこした。 この状態なら、位置的に顔は嫌でも見えるのだ。 ダガーはやっと大人しくなり、乱れた呼吸を整えた。 「………ジタン?どうして…」 「ダガーを助けに来たんだ。ブランク達にも手伝ってもらってな」 あのスタイナーの悲鳴とピッキングはタンタラス団の仕業だったらしい。 ダガーはホッと胸を撫で下ろした。 と、同時にちょっとした疑問が頭をよぎった。 「…これから何処に連れてくつもりなの?」 「んー…一晩くらい隠れられて、尚且つ寝ることが出きる場所、だな。」 「でも、アレクサンドリアだとすぐばれちゃうし…近くに町もないのに?」 「そこは俺にまかせとけ!」 ジタンは片手にダガーを抱いたまま、ポンッと自分の胸板を叩くと、 そのまま軽い足取りである場所へと向かった。 「ぜぇ…はぁ……着いたぜ!!」 「……ジタン、ここって………アレクサンドリア城の左塔じゃない!?」 目の前に広がるアレクサンドリアの夜の風景。 そこは2人にとって、思い出深いところでもあった。 「そう、ダガーが俺から逃げまわってさー……落ちた時はさすがに驚いたんだぞ?」 「……でも、どうしてこんなところに?」 「ん?そりゃここだったら見つかり難いだろうしさ…まさか攫ったのにまだ城にいるとは思わないだろ?」 「それはそうかもしれないけど…こんなところで寝たら凍死しちゃうわ…」 「くっついて寝ればなんとかなるだろ?」 「…………。」 「そういえばさ…ダガーはどうしてお見合いが嫌だったんだ?」 わざと言っているに違いない、その証拠に、顔が微妙に笑っている。 悪戯だとわかっていても、ダガーの顔は自然と赤なった。 「……わかってるくせに…。」 一言だけ、ポツリと呟いた。 ジタンはそれが聞こえたのか、満足そうに微笑んでいた。 「にしてもおっさんも気が早いよなー…もう結婚だなんてさ。」 「それは…仕方ないわよ、王族だったら私くらいの歳で結婚するのが普通だから…。」 「…あ、そうなの?」 「知らなかったの?これくらい普通なのよ。…たいていは政略結婚とか、だけどね…。」 ダガーはそういって、少し俯いた。 「ダガー!」 名前を呼ばれて、ダガーは顔を上げる。 その瞬間、何もかもが止まったような錯覚に陥った。 風の音が聞こえなくなって、風が吹いているかすらもわからない。 寒かった体は、ぽかぽかと、暖かくなっていた。 ずっとこのままでいたいと思うほど、しあわせで不思議な、甘い時間だった。 「…………っ!!」 酸素が足りなくなるにつれ、意識がだんだんと戻ってくる。 意識がはっきりと戻ったころには、もうすでに暖かいどころではない、 むしろ熱いくらいだ。 ダガーはまだ力の戻っていない手でジタンをぐっと押した。 「な、にしたのよジタンっ!!!」 「いや、つい……」 「ついって何よついってー!!!!」 ダガーは顔を真っ赤にしたまま怒鳴り散らす。 ジタンは慌ててダガーの口を押さえる。 「大声だしたらバレるだろ…?」 「むぐっぐむむ、むぐぐぐ〜!!(わかったから、離して〜!!)」 「あ、ゴメンゴメン。」 ジタンはパッと手を離す。 とたんにダガーは深呼吸を繰り返す。 「…だ、だからね!さっきどうしてあんなこと…!」 「欲しいものは唇だろうが何だって盗むのが盗賊だ!」 「…………。」 「本当はダガーそのものを盗みたいんだけどなー…。」 「…もぅ!」 「盗めないのは解かってるからさ…せめてお見合いとか、そういう関連のは俺が片っ端から潰してやろうと…」 「……でも、いつかは…」 「『いつか』なんてこさせない、俺が『いつか』を盗むからな。 目利きの手触りと盗賊の極意のアビリティをつけてでも!!」 熱くかたるジタンに、思わず笑みがこぼれる。 「ふふふ、ありがと……そろそろ私、寝るわね……おやすみ。」 そういうとダガーはジタンに寄り添ってスヤスヤと眠った。 ジタンはそっとダガーの髪の毛を撫でた。 「おやすみ。」 ジタンもダガーを包むようにして眠った。 寒くても、それはとても暖かい夜でした…。 〜Fin〜 |
あとがき 水無月ユエ様のサイトでキリリクした小説です。 凄くわがままなリクエストしてしまっただけに、ちょぴっと反省中……。 ジタガネの甘〜〜〜いお話を書いて頂きました☆ ちょこっとだけギャグ要素も入り混じっていて、面白いです。 そういえば、私もここ最近は甘甘な小説は書いていないなぁ……。 書きたいけれど、ネタが……ないんですよ……;; 水無月ユエ様、甘いジタガネのカップリング小説を書いて頂き 本当にありがとうございました〜♪ モドル |