とらぶる★ハプニング |
「どういう事だ・・・。部屋が三つ、しかも全部ダブルベッドの部屋しか空いてないなんて・・・」 周囲は不穏な気配に包まれ、スコールの眉間の辺りには苛立ちが漂っている。 「あたし、もう嫌やわぁ!疲れたわぁ!もう歩きとうない」 「僕も〜」 「俺だってそうだぜ」 「私もだよん、スコール・・・」 「ラグナロクまで戻って、休憩室で寝泊りすればいいんだろうけれど、正直、私ももうあそこまで歩きたくないのと、今日はふわふわの暖かなベッドの上で休みたいわ・・・」 皆は一斉に頭を左右に振り、脱力仕切った表情で大きく溜息を吐いた。 さて、早くも暗雲が立ち込めてるが、ここはデリングシティ。 パーティー一同は今日は相当遠出をしたらしく、これ以上は歩く事さえままならない状態なのである。 ホテルの受付カウンターまでやってきたは良いが、スコールの言葉通りに部屋は三つ・・・しかも全部ダブルベッドの部屋しか空きがなかったのだ。 男三人、女三人という組み合わせで、さて、一体どうしたものだろうか、と皆の全身からは剣呑なオーラが発散されていた。 「とにかく、今日はG.F.入手の為に、サボテンダーアイランドまで行ってジャボテンダーとのバトルでもうヘトヘトなのよ!”針万本”は食らうし、砂まみれにはなるし、最悪よ!」 キスティスがヒステリックに叫び、その横でアーヴァインがぼそりと言う。 「もう、ここのホテルにしちゃおうよ〜。これ以上は僕歩けな〜い。一晩くらいはこのお部屋で我慢しちゃおうよ。いいじゃないか、ふわふわのふかふかの高級ベッドには違いないんだからさ」 「仕方ないか・・・」 スコールが項垂れながら声を潜めると、セルフィは動揺の余り唾を飲み込んだ。 ここからが一番重要な所だ。 「でさ〜、部屋割りってどうする気なの?」 不安そうなその声音に、ゼルが唸りながら答える。 「まずは、男二人と女二人に別れて二部屋決定だろ?まあ、男二人でダブルベッドの上に一緒にお寝んねは勘弁だけど、この際、部屋に空きがないんだからしょうがねーよな」 「問題になってしまうのは・・・一部屋なんだよね・・・」 確かにここで問題となるのは、一部屋なのだ。 何故なら、どこをどうやったって男一人と女一人というスリリングな組み合わせになってしまうのだから。 リノアが肩を竦めてる中、ここは一番年上のキスティスが案を出す。 案と言ってもなんて事ない・・・ごくごく平凡な案だ。 「ここは公平に”じゃんけん”で決めましょう!」 その場に居合わせた全員は他に名案が閃く訳でもなく、頷くしかなかった。 「で、結局こうなるんだな・・・」 スコールは部屋に着くと、手荷物を放り出してベッドの上に寝転んだ。 「しょうがないよ・・・。私もスコールも・・・運が悪かったみたい・・・」 結局、じゃんけんに負けたのはスコールとリノアの二人。 いかにも仕組まれていそうな感じだが、決してそんな事はなく、インチキもイカサマもない普通のじゃんけん勝負をした。 愛の女神様の、ちょっとした悪戯なのか、それとも・・・? 「ダブルベッドはかなり広くて大きいけれど・・・でも私・・・」 部屋の隅っこに突っ立ったままのリノアは、口ごもってしまう。 「ちょっと恥ずかしい・・・」 「仕方ないだろう。明日も朝早いし、お互いもう寝た方がいい」 スコールは布団に包まりながら、リノアから背を向けた。 改めてリノアはベッドを舐めるように眺めた。 布団は、かなり大きい。 軽く二人は入れる布団で、枕が綺麗に二つ並べて置いてある。 その内の一つは既にスコールの頭が載っている。 ああ、これは何かの悪い冗談ではないか。 いや、でもやはりこれは現実の出来事であって。 「・・・おい・・・リノアは嫌なのか・・・?」 「え・・・な、何?」 「俺と一緒に寝るのが、そんなに・・・」 「えっ、ちっ、違う!違うよ、スコール!」 リノアは必死になって抗議をした。 「じゃあこっち来い・・・。あんただって疲れてるだろう・・・」 リノアは動揺しながらも手荷物を下ろすと、おずおずと遠慮がちにスコールの隣に潜り込む。 「お・・・お邪魔しまーす・・・」 横を向いたままのスコール。 リノアはそっと目を閉じるが、どうも落ち着かない。 やはり年頃の男と女。 肌が触れ合うほど傍にいて、意識しない方がおかしい。 壊れたメトロームが乱打するかのように、激しく高鳴る胸の鼓動。 スコールの方は至って冷静沈着、少なくともリノアの瞳にはそう映っていた。 「あ、あのさ・・・スコール・・・眠れる・・・?」 「ああ」 小さくあくびをしながらスコールが頷いた。 それを聞いた途端、ちょっぴり落胆する。 (私って・・・女として見られてないのかな・・・。だからそんなに簡単に・・・眠れちゃうのかな・・・) リノアは口の中で独りごちる。 (宇宙を漂っていた時も、魔女記念館に封印されそうになった時もスコールが助けに来てくれて、お花畑ではスコールの気持ちを沢山感じ取る事が・・・出来た気がしてたのに・・・) やっぱり・・・私は女としての魅力が無いのかな・・・。 胸の奥が鈍く痛む。 そんな気配を感じ取ったのか、スコールがやや強く言う。 「とにかく、リノアももう寝ろ。いや、寝てくれ。俺はとても眠いんだ・・・」 「なっ・・・!」 今の命令口調に、リノアはすこぶる機嫌を損ねた。 「な、何よ!・・・んもう、どうしてスコールはそんなに落ち着いていられるの!?私一人だけがドキドキしてて、私一人だけが緊張しちゃっててまるで馬鹿みたいじゃない!」 「お、おい、リノア?」 「スコールは私の事女として見てないんでしょう?馬鹿ーーーっ!」 「い、いい加減に・・・」 リノアがぎゃあぎゃあと騒ぎ出し、雑言を並び立てるので、スコールは咄嗟にその手首を掴んでベッドの上に押し付けた。 「ちょっ、はっ、離してよー!スコールの馬鹿馬鹿!いきなり何するの!?」 「あのな・・・」 気が動転しながらも抗議しようとするその声を遮るかのように、スコールがゆっくりと口を開く。 「鈍いのはあんたの動作だけじゃなかったようだな。頭の中まで鈍いとは・・・鈍感なのも大概にしろ!」 リノアは抵抗を試みたが、びくりともせずに力では全然男に叶わない。 「あんたは、俺の気持ちを考えた事があるか?今、俺がどんなに辛いか・・・あんたは気付かないのか?俺が・・・どんなに我慢してるか・・・!」 リノアの目が驚きの余り見開かれる。 それと同時に、スコールの体が重く圧し掛かってきた。 「えっ・・・だっ・・・駄目・・・スコールやだ・・・!」 手首を握り締めてる手が圧力を増し、もう体を自由に動かす事さえままならない。 「間違って”寝た子を起こしてしまった”ようだな。リノアの言う通り、俺は男でお前は女だ」 二人の唇と唇が、やや強引に触れ合う。 「んー・・・んんー・・・うんー・・・!」 リノアが必死にもがいても唇はなかなか離れてくれない。 暫くして、スコールの方が先に離した。 「この先・・・続けて欲しいか・・・?これ以上変な事言うともう俺は本当に抑えられない・・・」 「・・・・・・・・・。」 リノアは怯えた。 怯えながら心の中で反芻する。 ああ、御免なさい、スコールの気持ちも考えないで。 スコールは内心の動揺を悟られないように、平静を装ってたんだよね。 本当は私と同じで、緊張してて、この突然の状況にドキドキしてたんだよね。 私の事、きちんと女として見てくれてたんだ。 思ってる事を態度に出さない人だから、私もその事はわかってた筈なのに。 リノアの全身の震えを敏感に感じ取ったのか、スコールがおもむろに体を離す。 「悪乗りし過ぎた・・・すまない・・・。本当にもう寝よう・・・」 スコールは寝返りを打ち、そのまま無言となった。 リノアはほっとしたのと同時に先程までの行動を思い返し、スコールの心の痛みを考えてみた。 スコール・・・。 大きく一つ呼吸する。 「あ、あの・・・スコール・・・御免なさい・・・」 囁くように呟いてみたけれど、返事は無かった。 でも、構わずにリノアは続ける。 スコールがまだ寝ていないのはわかってるし、きちんと耳を傾けてくれてるのもわかっているから。 「その、成り行きとはいえ同じ部屋になってしまって、覚悟というか心の準備というか・・・。う、上手く言えないけれど、私、かなり動揺しちゃって!で、でもスコールったら全然落ち着いてて・・・私ったら女として意識されてないのかなーと考えてたら悲しくなって・・・」 しどろもどろになりながらも、必死に次の言葉を紡ぎ出す。 「な、何が言いたかったのか自分でも良くわからないけれど、い、嫌じゃないよ!スコールと一緒のお部屋で二人で寝るの、全然嫌じゃないの!ううん、逆に嬉しい・・・だけどね・・・もっと踏み込んだ深い関係になるのはまだ怖いの・・・。嫌じゃないけれど・・・やっぱり怖いの・・・」 もうほとんど支離滅裂だ。 だけど、伝えたい事はきちんと伝えられたと思う。 「・・・もう・・・いい・・・リノアの気持ちはわかってるから・・・だからおやすみ・・・」 背中越しに、苦笑の混ざったようなスコールの声が優しく聞こえてきた。 「有難う、スコール・・・おやすみ・・・」 「ああ、ゆっくり休め・・・」 その言葉を最後に、スコールは静かに寝息を立て始めた。 リノアも安心したかのように静かに瞼を閉じた。 だが・・・。 こ、困ったな、眠れない。 眠った振りをしたはいいが、やはり全然眠れない。 そう、スコールは寝ていなかった・・・。 さっきの俺は寝た振りをしていたんだ。 リノアはあの後すぐに眠ってしまったようで、まあ無理もないな、ジャボテンダーとのバトルで疲れてただろうしな。 「どうでもいいが、リノアはかなり寝相が悪い・・・悪過ぎる・・・」 何の前触れもなく俺に突然抱き付いてきて寝言を言った時は、正直驚いたぞ。 でも、柔らかい肌に包まれてると、気持ちがいい・・・。 ああ、どうやらもうすぐ眠れそうだ。 リノアの温もりに抱き締められながら、眠ろう。 「おやすみ、リノア・・・」 最後に、余談となるが今回のじゃんけんに負けたのがこの二人だった事に対して、内心穏やかでない人物がここに一人。 その人物とは、キスティス・トゥリープ。 ―――なんでよりによって、リノアとスコールがじゃんけんに負けちゃうのよ!むっきぃぃぃぃぃー、くやしい! 仲間としての心配心からくるものなのか、女の嫉妬心によるものなのかわからないが、いや、多分後者の方だろう。 そしてもう一人、この結末に肩を落としている人物もここに。 そう、それは紛れもなくアーヴァイン・キニアス。 ―――出来れば僕がじゃんけんに負けたかったな〜。そして、セフィも負けてくれれば、むふふふ〜。それにしてもスコールはリノアと二人きりで・・・羨まし過ぎるぞ〜・・・! 完全に邪な感情とスケベ心が丸出しなのであった。 END |
パフェ様のあとがき 100万HIT達成記念作品のFFアンケート第一位である”宿屋でドキドキスコール×リノア”(笑) ドキドキして頂けましたでしょうかヽ(´ー`)ノ あまり関係ないですけれど、この作品にアンジェロ出すのを忘れてしまいました(汗) やっぱりアンジェロはリノアにぴったりくっついて一緒にホテル(or宿屋)にお泊りするのかな? そうだとしたらペット可のホテルなんでしょうかね!? そんな素朴な疑問が浮かんでしまったのですが、どうなんでしょう・・・誰か教えて・・・。 2005.01.03 パフェ |
パフェ様のサイト『CRESCENT MOON』でフリー配布してあった小説を頂いて来ちゃいましたw 頂き物の中では2つ目のスコリノです〜〜〜o(゜∇゜*o) o(*゜∇゜*)o (o*゜∇゜)o キャアキャア♪ 表現がピュアで素敵で……あぁぁ……もうメロメロ……。 途中でリノア視点になったり、スコール視点になったり、三人称になったり……。 視点が入れ替わっても表現の細かさが変わっていないのが凄いです。 私も是非見習わなければ……。 モドル |